介護が必要な人の事例
●介護が進まないために早めにリフォーム
●最新医療を受けるため、病院近くに中古マンションを購入
●認知症にも有効だった ケアフォーム
●事例タイトル
●ケアサポートと並行し、将来に向けた安心のためのリフォーム
●1階を「ついの住まい」へリノベーション
●退院後、家で暮らせるようにマンションをスケルトンリフォーム
介護が進まないために早めにリフォーム
関西にひとりで暮らされているお母様(88歳)の相談に、拙著「住まいで老活」を読まれたというご夫婦がみえました。
お母さまは、足腰は弱っているっものの、まだひとり暮らしはできているが、これから介護が進むのではと、そろそろ心配と、早めの改善を考えられていました。
お母さまの住む自治体では、介護保健制度の住宅改修以外に自治体独自の住宅改修補助制度があり、もうすぐ申し込みが始まるので、制度も利用し、できるだけ長くお母さまが安定して、暮らせるようにしたい(工事費、補助だけでは不足する場合は150万円程度ならお母さまが用立てされるご予定)。
生活されている写真など拝見しながら、工事内容、工事業者の選定などに関し、その後いくつかアドヴァイスさせて頂きました。相談にみえてから、半年後に工事は終わりました。2019年末完成
荷物を整理し、床に座って食事されていた生活を、椅子とテーブルに変え、簡単な調理ができるよう座って作業できるキッチンにされました。
完成して半年ほどたち、新しいキッチンで調理しやすくなり、椅子式の生活で動きやすくなったお母さまは、見違えるようにお元気になられたそうで、ご家族から「リフォームして本当に良かった。自己負担も予算の半分以下で収まった」と嬉しいご連絡を頂きました。
※多くの高齢者が低栄養のため、虚弱(フレイル)に陥っています。注意したいものです。
最新医療を受けるため、病院近くに中古マンションを購入
長い間リウマチを患っていた北陸に住む団塊世代の女性の方が、病気の進行を抑える最新医療を受けるため、子どもたちの住む都内に約40㎡(1LDK)のエレベーターのあるバリアフリーの中古マンションを購入されました。希望条件を整理し、複数の物件を子供さんたち立ち会いで見学。マンション探しから、リフォーム完成までは約7ケ月でした。
ひとりで暮らせなくなったらマンションを処分し、その費用で母親のように有料老人ホームに入るつもりとのご意向で、ご自身の「ついの住まい」に関するしっかりしたお考えをお持ちでした。
マンション探しは不動産会社と連携し、リフォームに費用がかからず、ひとりで暮らしやすい間取りのマンションを選び、最低限のリフォームを行いました。マンションは母校の大学にも近く土地勘があり、マンション前のバス停から娘さんのところまで十数分なので安心と喜んで頂きました。完成2016年(リフォーム約360万円)
2021年ご本人からのコメント:車椅子生活になることを危惧していたが、病状は安定している。通院はゆっくり歩いても5分程で、雨の日も楽で、本当に有難い。。
新型コロナウイルで、主人の住む北陸に帰ることもままならないが、毎日感謝しながら暮らしている。
認知症にも有効だった ケアフォーム
アルツハイマーの方の住みながらのケアリフォーム(築40年、鉄筋コンクリート造2階建)
息子ご夫婦が要介護のご両親の日常生活の安定に向けて、同居し介護するために二期に分けて二世帯住宅にリノベーションされました。
医療や介護関係者には認知症にリフォームは禁物との常識があり、反対にあいましたが工事が完成すると、お父様の夜間住居内徘徊が止み、見守りがあれば自分でトイレに行けるようになりました。
事例タイトル
相談時:父90歳、要介護3(後に4) 認知症2015年1月癌でご逝去されました。
母80代前半、要支援2 息子夫婦(60台前半)
2021年2月ご家族からのコメント(奥様は4年前から、前のご経験を活かした新たな専門職に就かれました)。父が亡くなり7回忌が過ぎました。家族3人変わりなく過ごしています。
92歳になった母は要支援2で変わらず、週に1回デイケア(リハビリ)に通うのを楽しみにしています。床暖房、2重サッシに変えたので、冬暖かく、夏も快適です。母は頻尿になりましたが、部屋の前に暖房のあるトイレがあり、本当に助かっています。 前の寒い家のままなら、要支援2をキープすることは難しかったと思います。 夕食は一緒ですが、それ以外はお互いに別の生活で、不自由なく過ごせています。2階にミニキッチンがあり、朝食などは、そこで用意できます。
途中からの同居ですが、1階と2階の生活を完全に分けたことが、お互いの生活に本当に良かったと感じています。父の介護を抱えながらのリフォームは、今思い返しても大変でしたが、みんなで最後まで父を看取ったことは、何にもまして得難い、家族の経験でした。
父のためのリフォームでしたが、おかげで今、母が自律して生活できています。早めの「ついの住まい」へのリフォームは大切だと、改めて感じています。
ケアサポートと並行し、将来に向けた安心のためのリフォーム
岩波新書「住まいで『老活』」を読まれた方から、回復期リビリテーション病院 に入院中のご主人様の退院に向け、家を直したいとのご相談がありました。
ケアサポートと平行し、設計作業
途中から奥様の「ついの住まい」を主眼にリノベーション
築46年鉄筋コンクリート造(工事対象部約85㎡)完成2019年末
同居されていたご両親を看取り、子供さん達も結婚し既に別居。
1階は浴室のみ使用され、他は残された荷物置き場になっていました。ご相談は、ご主人の帰宅に向け、1階で暮らせるようにしたい。
現在お住まいの2階は近い将来近くに住む娘さんご家族のお住まいの予定なので、今回工事の対象外(工事は2階に住みながら行いました)。
ケアサポート 実母の看護・介護経験を基に具体的にアドヴァイス
ご主人様が帰宅可能な状態か伺うために、病院でお会し、コミュニケーションはきちんと取れる事を確認。リハビリでどこまで回復するかが在宅に向けたポイントになるので、その後開かれた、病院のカンファレンスに同席させて頂きました。痰の吸引のための気管切開されたおり、医師から身体のリハビリを実施していないと聞き驚いたりしました(同席の看護師、理学療法士も)。
病状が安定し、もう少しリハビが進めば、多少医療的な管理が必要でも在宅な可能なケースもあることから、地域包括ケアセンターに同行し、近くに開設予定の福祉複合施設に設置されるという療養通所介護の利用などについて相談しました。
その後担当医師が代わりましたが、改善せず、身体のリハビリも進まず、医療療養型病院へ転院されました。経験豊かな病院できめ細やかな生活支援、日課とされた奥様の熱心な看護・介護が続き、車椅子での散歩、少しずつ口から食事をとる訓練など、半年のリハビリを経て、短時間の車での外出が可能となるまで回復されまました。
これからは、短時間でも家に戻れる事を目指されるそうです。
1階を「ついの住まい」へリノベーション
建物の現状確認
・外壁に大きなひび割れ、補修跡、錆汁の跡もなく、躯体には問題ありませんでした。
・30年を超えるような築年数の家の多くはトイレ、洗面、浴室など水廻り部分が狭く、車椅子などは使用できない事が多く、ご主人様の帰宅、奥様の「ついの住まい」とするには、間取りを含め、大幅な変更が必要でした。
・玄関ホール、廊下、居室、水廻りに段差があるため、床の仕上材を全て撤去し、段差をなくす事にしました。
・キッチン、トイレ、洗面、浴室の位置自体は変更しませんでしたが、水道など古い配管は全て床仕上げ撤去後に交換しました。
※賃貸している3階も含め、縦配の交換の必要性の確認のため、排水管はフィアバースコープで調査確認後、清掃しました(幸い交換の必要はありませんでした)。
・主要な扉(開口部)も車椅子利用、介助を念頭に広さを確保しました。
・設計中にご主人の帰宅が困難となり在宅介護を断念されましたので、ご主人様の居室に予定していた部屋は奥様が使用される事になり、収納などを見直しました。
・その他の内容は、奥様の将来の生活の安心にもつながり、暮らしやすくなるので、設計変更せず工事をすすめました(2階に居住のまま)。
・同居予定の娘家族とのつながりを、どのようにするか決めてもらい、変更する2階への階段と床仕上げ材の厚みをすり合わせ、1段の高さを調整しました。
退院後、家で暮らせるようにマンションをスケルトンリノベーション
60台前半の女性が、80台後半のお母さまの退院を控え、今後の「暮らしや住まいについて」相談にみえました(入院時要介護3、設計時要介護1)。築43年約75㎡ 完成2012年冬
ご自宅に伺い、管理事務所から新築時の設計図面を借りて、設備や構造図などを確認しました。
設計時築43年:大手ゼネコンが都内で最初に手掛けたマンション。当時の建築基準法を大幅に上回る耐震性を有する(内装撤去後、コンクリート躯体部もひび割れなく、良好に保たれていた)
建物が良好である旨が判明し、娘さんはこれからのお母さまとの生活と将来のご自身の「ついの住まい」を念頭に、内装材を全て撤去した、スケルトンリノベーションしました。
お母さまは、工事中は有料老人ホームのミドルステイを利用されました。
設計に、2重サッシ、床暖房の設置など、最新設備を取りいれました。
娘さんは仕事を続けながら、有料老人ホーム探し、荷物の片付け、一時預け、設計の打合せ、入所されたお母さまへの毎日の面会と続き、一時体調を崩されましたが、おふたりとも温かい新居に「夢のよう」と喜ばれました。